前回は,FP3級にでたらめに回答したら,何点取れるのか?を計算した。
結果は,鉛筆を転がしても,学科は平均して4割は取れるという驚愕の結果だった。
さて,実際に試験を受験するときには,さすがに全問をでたらめに回答はしないだろう。
ある程度は,自力で確実に正解できる。
そして,残りの部分はランダムだ。
ここで気になることがある。
「事前にどれほど勉強すればよいのか?」
つまり,
- 「自力で確実に解ける問題がいくつあれば,残りはまぐれで合格点を取れるのか?」
という疑問だ。
最小限の労力で合格するために,確実におさえる割合は?
という,不真面目な疑問だが・・・。
この疑問に答えるために,確率と期待値を使って,実際に計算してみた。
その結果が…。
確率の計算による結論:
・FP3級の学科試験では,
正誤問題を30問中6問 (つまり2割)と,
3択問題を30問中12問 (つまり4割)を
自力で確実に解ければとりあえずOK。
残りはでたらめに回答しても,
確率的に平均して,合計で6割取れて合格できる。・FP3級の実技試験では,
FP協会なら20問中8問(つまり4割),
きんざいなら15問中6問(同じく4割)を
自力で確実に解ければとりあえずOK。
残りはでたらめに回答しても,
確率的に平均して,合計で6割取れて合格できる。・ただし上記の計算では,
自力で解いた部分は,確実に正解している必要がある。
えっ・・・?
2割と4割だけわかってれば,あとは鉛筆を転がして,
学科に合格できるとな・・・
・・・
この計算を実行するプログラムを下記に掲載する。
前回と同じく,下記のソースコードを foo.js で保存してダブルクリック。
/* FP3級の試験で,「自力で確実に解ける問題」が何割あれば あとはまぐれで合格できるのか を計算するプログラム 学科+実技(FP協会・きんざい) それぞれ算出。 */ // 和をとる function sigma( func, n_start, n_end ){ var sum = 0; for( var i = n_start; i <= n_end; i ++ ){ sum += func( i ); } return sum; } // C,組み合わせ function combination( a, b ){ return permutation( a, b ) / factorial( b ); } // P,順列 function permutation( a, b ){ return factorial( a ) / factorial( a - b ); } // !,階乗 function factorial( n ){ return ( n <= 1 ) ? 1 : n * factorial( n - 1 ); } // a択のテストをq問受けてそれぞれランダムに解答し,n問正解する確率 function prob_seikei_number( a, q, n ){ return ( combination( q, n ) * Math.pow( ( 1 / a ), n ) * Math.pow( ( ( a - 1 ) / a ), q - n ) ); } // a択のテストをq問受けてそれぞれランダムに解答し,k問以上正解する確率 function prob_goukaku( a, q, k ){ return sigma( function( n ){ return prob_seikei_number( a, q, n ); }, k, q ); } function log(s){ WScript.Echo(s); } // 配列のイテレータ関数 Array.prototype.each = function( func ){ for( var i = 0; i < this.length; i ++ ){ func( this[ i ], i ); } return this; }; // map関数 Array.prototype.map = function( func ){ var arr = []; this.each(function( item, index ){ arr.push( func( item, index ) ); }); return arr; }; // 数値を小数点第二位で四捨五入 function decimal2( n ){ return Math.round( n * 10 ) / 10; } // 自力で何問とければよいのか? // a択の試験で,q問中のk問を自力で正解できて, // 残りはでたらめに回答した場合の得点の期待値 function jiriki_and_random_tokuten( a, q, k ){ return ( // 自力で正解できる問題数 k + // まぐれで正解する問題数 sigma( function( n ){ return n * prob_seikei_number( a, q - k, n ); }, 0, q-k ) ); } // a択の試験をq問受けた時に, // 「自力で解ける問題数」kと,得点の期待値yとの // 関係をグラフにして調べる。 // そのためのデータを配列で返す function data_jiriki_graph_for_one_test( a, q ){ var arr = []; // 自力で解ける問題数を変えながら,得点を調べる for( var k = 0; k <= q; k ++ ){ // 得点の期待値 var avg_score = jiriki_and_random_tokuten( a, q, k ); // 記録 arr.push({ jiriki : k, avg_score : decimal2( avg_score ), percentage : decimal2( avg_score / q * 100 ) }); } return arr; } // a択の試験をq問受けた時に, // 「自力で解ける問題数」kと,得点の期待値yとの関係を // 計算した結果を表示する function show_jinriki_graph_for_one_test( a, q ){ var ret = data_jiriki_graph_for_one_test( a, q ) .map(function(info){ return info.jiriki + " 問 → \t" + info.avg_score + " 問正解 :\t" + info.percentage + " %" ; }) .join("\n") ; log("自力で解けた問題の数 → 正解数の期待値 : 得点率\n" + ret); } // FP3級の実技(FP協会)で,自力で解ける問題数と得点の関係 show_jinriki_graph_for_one_test( 3, 20 ); // 自力で20問中の8問正解すれば, // あとはまぐれで合計12問正解できて, // 6割(60%)取って合格できる。 // FP3級の実技(きんざい)で,自力で解ける問題数と得点の関係 show_jinriki_graph_for_one_test( 3, 15 ); // 自力で15問中の6問正解すれば, // あとはまぐれで合計9問正解できて, // 6割(60%)取って合格できる。 // FP3級の学科の正誤問題で,自力で解ける問題数と得点の関係 show_jinriki_graph_for_one_test( 2, 30 ); // 自力で30問中の6問正解すれば, // あとはまぐれで合計18問正解できて, // 正誤問題の中で6割(60%)取れる。 // FP3級の学科の3択問題で,自力で解ける問題数と得点の関係 show_jinriki_graph_for_one_test( 3, 30 ); // 自力で30問中の12問正解すれば, // あとはまぐれで合計18問正解できて, // 3択問題の中で6割(60%)取れる。 /* 確率の計算による結論: ・FP3級の学科試験では, 正誤問題を30問中6問(つまり2割)と, 3択問題を30問中12問(つまり4割)を 自力で確実に解ければとりあえずOK。 残りはでたらめに回答しても, 確率的に平均して,合計で6割取れて合格できる。 ・FP3級の実技試験では, FP協会なら20問中8問(つまり4割), きんざいなら15問中6問(同じく4割)を 自力で確実に解ければとりあえずOK。 残りはでたらめに回答しても, 確率的に平均して,合計で6割取れて合格できる。 ・ただし上記の計算では, 自力で解いた部分は,確実に正解している必要がある。 */
※参考:
Javascript 四捨五入・切り上げ・切り捨て方法 Math.round,Math.ceil,Math.floor | ホームページ制作のサカエン(墨田区)
http://www.saka-en.com/javascript/round-roundup-rounddown/
- 基となる数値を 10 で乗算させ、それをroundで四捨五入し、その後 10 で除算して小数点を戻します。 結果、小数点第 2 位で四捨五入された値を求めることができます
このプログラムの実行結果
出力を載せてみる。
学科試験の正誤問題で,自力で解けた問題数と,合計得点の関係:
自力で解けた問題の数 → 正解数の期待値 : 得点率 0 問 → 15 問正解 : 50 % 1 問 → 15.5 問正解 : 51.7 % 2 問 → 16 問正解 : 53.3 % 3 問 → 16.5 問正解 : 55 % 4 問 → 17 問正解 : 56.7 % 5 問 → 17.5 問正解 : 58.3 % 6 問 → 18 問正解 : 60 % ←ここがボーダー 7 問 → 18.5 問正解 : 61.7 % 8 問 → 19 問正解 : 63.3 % 9 問 → 19.5 問正解 : 65 % 10 問 → 20 問正解 : 66.7 % 11 問 → 20.5 問正解 : 68.3 % 12 問 → 21 問正解 : 70 % 13 問 → 21.5 問正解 : 71.7 % 14 問 → 22 問正解 : 73.3 % 15 問 → 22.5 問正解 : 75 % 16 問 → 23 問正解 : 76.7 % 17 問 → 23.5 問正解 : 78.3 % 18 問 → 24 問正解 : 80 % 19 問 → 24.5 問正解 : 81.7 % 20 問 → 25 問正解 : 83.3 % 21 問 → 25.5 問正解 : 85 % 22 問 → 26 問正解 : 86.7 % 23 問 → 26.5 問正解 : 88.3 % 24 問 → 27 問正解 : 90 % 25 問 → 27.5 問正解 : 91.7 % 26 問 → 28 問正解 : 93.3 % 27 問 → 28.5 問正解 : 95 % 28 問 → 29 問正解 : 96.7 % 29 問 → 29.5 問正解 : 98.3 % 30 問 → 30 問正解 : 100 %
学科試験の3択問題で,自力で解けた問題数と,合計得点の関係:
自力で解けた問題の数 → 正解数の期待値 : 得点率 0 問 → 10 問正解 : 33.3 % 1 問 → 10.7 問正解 : 35.6 % 2 問 → 11.3 問正解 : 37.8 % 3 問 → 12 問正解 : 40 % 4 問 → 12.7 問正解 : 42.2 % 5 問 → 13.3 問正解 : 44.4 % 6 問 → 14 問正解 : 46.7 % 7 問 → 14.7 問正解 : 48.9 % 8 問 → 15.3 問正解 : 51.1 % 9 問 → 16 問正解 : 53.3 % 10 問 → 16.7 問正解 : 55.6 % 11 問 → 17.3 問正解 : 57.8 % 12 問 → 18 問正解 : 60 % ←ここがボーダー 13 問 → 18.7 問正解 : 62.2 % 14 問 → 19.3 問正解 : 64.4 % 15 問 → 20 問正解 : 66.7 % 16 問 → 20.7 問正解 : 68.9 % 17 問 → 21.3 問正解 : 71.1 % 18 問 → 22 問正解 : 73.3 % 19 問 → 22.7 問正解 : 75.6 % 20 問 → 23.3 問正解 : 77.8 % 21 問 → 24 問正解 : 80 % 22 問 → 24.7 問正解 : 82.2 % 23 問 → 25.3 問正解 : 84.4 % 24 問 → 26 問正解 : 86.7 % 25 問 → 26.7 問正解 : 88.9 % 26 問 → 27.3 問正解 : 91.1 % 27 問 → 28 問正解 : 93.3 % 28 問 → 28.7 問正解 : 95.6 % 29 問 → 29.3 問正解 : 97.8 % 30 問 → 30 問正解 : 100 %
実技試験(FP協会):
自力で解けた問題の数 → 正解数の期待値 : 得点率 0 問 → 6.7 問正解 : 33.3 % 1 問 → 7.3 問正解 : 36.7 % 2 問 → 8 問正解 : 40 % 3 問 → 8.7 問正解 : 43.3 % 4 問 → 9.3 問正解 : 46.7 % 5 問 → 10 問正解 : 50 % 6 問 → 10.7 問正解 : 53.3 % 7 問 → 11.3 問正解 : 56.7 % 8 問 → 12 問正解 : 60 % ←ここがボーダー 9 問 → 12.7 問正解 : 63.3 % 10 問 → 13.3 問正解 : 66.7 % 11 問 → 14 問正解 : 70 % 12 問 → 14.7 問正解 : 73.3 % 13 問 → 15.3 問正解 : 76.7 % 14 問 → 16 問正解 : 80 % 15 問 → 16.7 問正解 : 83.3 % 16 問 → 17.3 問正解 : 86.7 % 17 問 → 18 問正解 : 90 % 18 問 → 18.7 問正解 : 93.3 % 19 問 → 19.3 問正解 : 96.7 % 20 問 → 20 問正解 : 100 %
実技試験(きんざい):
自力で解けた問題の数 → 正解数の期待値 : 得点率 0 問 → 5 問正解 : 33.3 % 1 問 → 5.7 問正解 : 37.8 % 2 問 → 6.3 問正解 : 42.2 % 3 問 → 7 問正解 : 46.7 % 4 問 → 7.7 問正解 : 51.1 % 5 問 → 8.3 問正解 : 55.6 % 6 問 → 9 問正解 : 60 % ←ここがボーダー 7 問 → 9.7 問正解 : 64.4 % 8 問 → 10.3 問正解 : 68.9 % 9 問 → 11 問正解 : 73.3 % 10 問 → 11.7 問正解 : 77.8 % 11 問 → 12.3 問正解 : 82.2 % 12 問 → 13 問正解 : 86.7 % 13 問 → 13.7 問正解 : 91.1 % 14 問 → 14.3 問正解 : 95.6 % 15 問 → 15 問正解 : 100 %
それぞれ「自分で解けた問題数が0問」の場合に注目してほしい。
正誤問題は無勉でまったくわからなくても半分取れるし,
3択も無勉で3分の1は取れる。
これが選択式問題というもの。。。
この数字をどうとらえればよいか
「最小限の労力で資格を取得」という考え方は,あまりよくない。
しっかりした知識の証明として,公的な資格の肩書きが与えられるわけで。
だから,「手抜き」を目的として冒頭の数字を参照すべきではないだろう。
しかし,この数字は,まじめな学習者にも役立つ。
「たくさん勉強しても,自力では解けない問題が多くて,挫折しそうだ」
と感じている人がいるかもしれない。
そんな人に,「全ての問題を,自力で解ける必要はないんですよ」
と教えてあげられる。
「ある程度の努力と実力が伴っていれば,ちゃんと報われるような仕組みになっているから大丈夫ですよ」
と,安心させることができる。
そんな用途で,この数値を眺めればよいのではなかろうか。
※なお確率の計算の都合上,各問の配点は等しいとした。
※また,学科試験は正誤問題と3択の組み合わせが
合格基準点の6割に達していればよくて,採点時は別々にカウントはしない。